国産材に付加価値を与えるワイス・ワイスの取り組み
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フェアウッドや違法伐採という言葉が、インテリアの業界でまったく語られていなかった2008年にグリーンカンパニー宣言を行い、サスティナブルな木材調達と国産材の使用に大きく方向転換した家具メーカーのワイス・ワイス。最近は、スターバックス コーヒー ジャパンと協働する、地域材を使った「JIMOTO table」プロジェクトが好評という同社代表の佐藤岳利さんに、最新事例や地域との取り組みについて話を聞いた。
ワイス・ワイスは、“森をつくる家具”をテーマに掲げ、日本各地の木材を使い、地域の職人の手による家具を製造・販売してきた。また、10年ほど前からは、地域材を使い、単に意匠的にかっこいいものをつくるのではなく、クライアントや来店者が森林に興味を持ち、さらには企業や個人と自然環境が繋がるきっかけづくりを意図した店舗やホテル、公共施設などの空間デザイン、家具デザインを手掛け、さらに内装材や家具用材の調達までを行なってきた。そうしたプロジェクトにスターバックス コーヒー ジャパンとの出会いがあり、両社の思いが重なったことがきっかけとなり、2018年に同社とワイス・ワイスによる、サスティナブルな国産材を使った家具を店舗に導入していくプロジェクトが始まった。
2018年12月にオープンした「スターバックス コーヒー ムスブ田町2階店」では、ワイス・ワイスが産地と店舗の間に立ち、みなとモデル(※)の協定木材である秋田県湯沢市のナラ材を使った家具や端材を活用したアートが採用され、魅力的なストーリーを持つ店舗が生まれた。ムスブ田町2階店は、両社が連携する「JIMOTO table」プロジェクトの起点となり、その後、スターバックスの店舗に地域材、国産材を用いたコミュニティテーブルなどが導入されていった。
2019年11月に大阪にオープンした 「スターバックス コーヒー LINKS UMEDA 2階店」では、大阪産の木材をふんだんにに使用した空間がつくられた。
「ここでは、おおさか河内材の杉と大阪産の栗を使い、角材を積み重ねたベンチなど、すべての家具と、象徴的な丸太を使った柱まで、スターバックスの店舗設計チームと連携して製作しました。計画当初は、大阪府内の林業をリサーチするところから始め、地元の木材でどこまでできるかを探求するプロジェクトとなりました」。デザインは、スターバックス社内の店舗設計担当者のディレクションのもと、地元産の材料でできることを共有しながら取りまとめていったものだという。
「木というのは自然素材なので、一歩間違えると反りや割れなど不良品になるリスクがあります。オープン日が決まっている中で、新たな土地で材料調達から始める家具づくりとなると、あまりに手間と時間が掛かるため他のメーカーは敬遠するでしょうね(笑)。しかし私たちは、木を通して出会った志を持つ方々と国産材で完成度の高い家具をつくってきた経験があり、高い目的意識があれば地域内で家具づくりまで完結できることを知っています。森を守ることは子どもたちの未来に自然環境を残すために欠かせないことであり、そのためには地域に仕事をつくることが大切だと私たちは考えているのです」と佐藤さんは語る。
また、そうやって地元の材料で、地元の職人たちの手によってできた家具や内装からは、伝わるものがまったく違うのだという。
「この店舗に限らず、スターバックスでは、開業前に店舗開発に携わった関係者から店長やパートナーの皆さんにお店のことを説明する機会があるのですが、そこで家具について話すと、感動して涙する方もいました。そうやって我々の思いを伝えることで、働く方の気持ちにスイッチが入るのだと感じます。そして、パッションを共有したパートナーから、コーヒーを飲みに来たお客さまへと思いは伝播していくのです」
さらに、このLINKS UMEDA 2階店では、実際に現場に立つパートナーたちが開業前に林業の現場を訪ね、間伐を体験する機会が設けられたことで、その思いはダイレクトに伝わったという。ワイス・ワイスは国産材の活用にこだわり、生産者と深く関わることで、生産地と社会、生産地と事業主をつなぐ役割を担っているのだ。
村全体の木工の活性化を目指し、ワイス・ワイスが地域プロデュース事業として携わる群馬県上野村の様子。豊かな森に囲まれ、数多くの木工職人や工芸家が活動している。 写真提供/ワイス・ワイス
近年、同社では、家具や日用品づくりで得た知見をもとに地域をプロデュースするコンサルティング業務も手掛けている。
その内容を尋ねると、「私たちは、“つながる・しあわせ”という理念のもとに家具や生活雑貨を扱いながら、フェアウッド、国産材の活用、サスティナブルな調達、という三つに力を入れてきました。国産材に目を向けると、森林は日本最大の自然資源ですが、林業は産業としては非常に厳しい。また、木材の用途としては、バイオマス燃料やパルプチップにするのではなく、CO2を固定化した状態、つまり木のままで長く使うことが理想的だと考えています。そうした状況の中で、私たちは国産材を産地にできるだけ近い場所で高付加価値の商品にして市場に直接販売することに取り組んできました」。
産地の近くで商品化するのは、そうしなければ、地域にお金と仕事の両方を残すことができないからだ。地域プロデュース事業では、そのための施策を、行政や、社有林を持つ企業に伴走するかたちで提供しているという。
現在進行中という群馬県上野村との取り組みでは、村長らとグランドデザインを描く一方で、自社の生活雑貨を販売する都内のショップ「WISE・WISE tools」で「上野村・暮らしの道具展」という販売イベントを催すなど、幅広い提案を行なっている。
こうした地方自治体との仕事では、目先のものを売るだけではなく、稼げる産業として就労者を増やし、“未来の地域をつくる”ことがゴールだと佐藤さんは言う。“豊かな暮らし”を掲げて創業したワイス・ワイスの見据える未来には、どんな生活が描かれていくのだろうか。今後も彼らの動向をレポートしていきたい。
words : IDREIT
※ 「みなとモデル」とは、東京都港区内の公共施設・民間建築物等での国産木材の使用を促し、その使用量に相当する二酸化炭素固定量を区が認証する制度。
株式会社ワイス・ワイス TEL: 03-5467-7001