仮想現実の外側 by Shiori Maeda
武蔵野美術大学 造形学部 建築学科
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EN
本作品では、『内と外を見立てる』ことをテーマに”立体形状”が内包する空間的情報と、”映像”が想像させる空間的情報とが互いに掛け合わされ、新しい空間の錯覚を誘発させます。例えば立体の凹凸形状は、凹なら室内的、凸なら外部的として見える空間的情報を持ち、映像であるならば、瓦は外、障子や襖は内として情報処理されるでしょう。このように立体と映像の空間的意味が重なり合ったり反転したりすることで、この空間を内にも外にも見立ててしまうのです。3台のプロジェクターが内部と外部の映像を交互に映し出し、全く異なる場所で撮影したはずの風景が、立体スクリーンと部屋の壁でパッチワークされ、見る者に架空の新しい間取りや全体像を想起させます。人の歩く気配は、もはや非現実である“映像で歩く人”と、“実際に歩く人影”とが等価され、現実と非現実の境目が曖昧になり、この現象自体が新たな現実空間へと変化しています。
「仮想現実の外側」、このタイトルは、二次元的空間特性からまだ抜け出せ切れない今の仮想現実(AR,VR,プロジェクションマッピング等)を、より三次元的視点で読み解こうとしたことに由来します。これまでの仮想現実空間は、制作者の意図が色濃く反映され、均質的な空間演出になりがちであった一方、これからは仮想現実自体に空間を想像する余地を残していくことで、臨場者がより主体となる空間へと変わっていくと思います。新型コロナウイルスでリモート化やデジタル化が促進された2020年、この現実と非現実が混沌とした世界で、建築家がこれから開拓していく空間の先に「虚構」の空間が必ずあります。虚構を新軸として空間を設計していくことで、非現実を多角的に捉え、発見していく新しい建築の可能性が生まれてくるのではないでしょうか。
words: Shiori Maeda
CREDIT
作品名:仮想現実の外側
氏名 :前田汐理
学校名: 武蔵野美術大学 造形学部 建築学科
卒業年:2021
応募カテゴリー:インスタレーション