阿里山森林鉄道観光復興計画 by Lai Hannung
大阪芸術大学 デザイン学科 空間デザインコース
日本統治時代の台湾には、森林開発のための産業鉄道である阿里山森林鉄道が建設されていた。現在は観光鉄道として運行されているが、近年山間部の住民人口減少の問題で、駅が無人駅になると共に、台風や地震などの災害により、鉄道が損傷を受けるなど、地域の魅力が低下している。昔のような賑やかな光景を取り戻すために、空間デザインの力で、鉄道に関する施設を再び活性化しながら、現状の山資源を活かして、阿里山森林鉄道の復興観光計画を考えた。
一、列車&野遊び、世界初のグランピングトレイン
阿里山は、森林に囲まれることで、自然をめいいっぱい満喫できるキャンプ場として、とても良いのではないかと考えながら、既存の鉄道とホームをキャンプルートとロケーションに設定。列車をキャンピングカーのように使う、グランピングトレインをデザインした。山の気候を感じ、朝の登山や霧の森を探検するなど、色々な遊び方のできる斬新な鉄道旅行を考えた。
二、食&言葉、人々のコミュニティ、ダイニングトレイン
既存の良好な状態の旧駅舎は、無人駅になっているが、切り離せるという車輛の特性を生かし、キッチン設備を備えた列車を駅にレストランとして出店する。かつて繁栄した駅舎を体験し、また同時に、観光客と地元の人が交流できるコミュニティースペースとして機能する。
このような形により各駅へ出張できることから、スタッフは現地に留まる必要がなく、人件費やメンテナンスへの負担を減らし、観光に貢献することができる。
三、歴史館、ホテル、鉄道、車庫を融合したリゾート
阿里山森林鉄道にある三ケ所の車庫が長年使われていないため、この観光復興計画では、グランピングトレインとダイニングトレインを駐車する車輛センターとして使いながら、ホテルサービス空間を計画した。
鉄道の乗車客のみならず、車で来るお客様も利用することができる。現代の忙しい日々に、列車とホテル、移動と宿泊を組み合わせた、一貫性のある鉄道旅行プランをイメージし、ガレージホテルリゾートのデザインを考えた。
車輛を生かした新たな空間を構築したことで、静謐の森の中で自然や季節を楽しむ独自の使い方と鉄道を掛け合わせたグランピングトレイン。歴史的な駅舎で、沢山の人々と食事を通して交流できるダイニングトレイン。車庫をリノベーションしたガレージホテル。時代に合わせて計画したこれらの施設では、人、自然、列車が関わり合い、森林鉄道の魅力を生かした阿里山でしか実現できない観光計画となった。
words: Lai Hannung
CREDIT
作品名:阿里山森林鉄道観光復興計画
氏名 :賴 涵農(ライ カンノウ)/Lai Hannung
学校名:大阪芸術大学 デザイン学科 空間デザインコース
卒業年:2020