CHALET W by CASE-REAL
Hokkaido, Japan
DESIGN NOTE
積雪寒冷地のルールから導かれた建築形状
羊蹄山を望むピクチャーウィンドー
傾斜屋根下の座敷スペース
photography : Daisuke Shima
words : Reiji Yamakura/IDREIT
CASE-REALが設計した、スキーリゾートとして海外からも人気の高い北海道・ニセコに計画された新築の別荘。豊島にある「海のレストラン」(2013年)でCASE-REALを知った海外の施主から、突然の連絡を受けて始まったプロジェクトだという。
当初の要望を、二俣公一に尋ねると「すでにこの土地を取得していた施主からは、できる限り床面積を確保したいこと、そして、羊蹄山を望む開放的なリビングダイニングが求められました。豪雪地帯のため、落雪飛距離の規定から切妻屋根では必要な面積が確保できないことがわかり、単調な箱型でない建築が望まれていたことも踏まえ、検証を重ね、陸屋根と傾斜屋根を組み合わせることにしました」。
不慣れな積雪寒冷地のルールの中で、建築のボリューム形状を決めることにはかなり苦労したというが、内樋を設けたフラットな陸屋根部分は屋根上で雪を溶かす機構とし、これに隣地との距離や勾配の規定を満たした傾斜屋根を組み合わせることで個性的な外観が生まれた。外壁と屋根は、雪景色の中での見え方を考慮し、淡いグレーに染色した道産杉とシルバー色の鋼板により、周囲の白樺の林に馴染む色調としている。
インテリアに関しては「傾斜面が天井と壁の中間的な存在となり、特徴的な内部空間を得ることができました。東側の傾斜屋根の一部には、羊蹄山の景色を取り入れるために幅が約3mの出窓を二つ設けています。また、日本文化に関心の高い施主から、ゲストが来た時にくつろげる座敷が欲しいという希望もあり、奥行きのあるベンチのようなスペースを傾斜屋根の下に設けることを提案しました」とデザインのプロセスを振り返る。
壁と天井は白く、床と造作に彩度を抑えた素材を用いたのは、アートコレクターでもある施主のコレクションが映えることと、窓外の景色とのコントラストを意識したからという。
傾斜屋根下の小上がりには、現代アートが飾られる空間との調和を考慮し、サイザルカーペットを使用。また、施主から望まれた日本的なエレメントである檜風呂と畳敷きの部屋は1階に設けられている。
(文中敬称略)
DETAIL
所在地:北海道虻田郡倶知安町
竣工:2019年
面積:82.1m2
建築面積:79.2m2
延床面積:96.39 m2(1階47.79 m2、2階48.6 m2)
敷地面積:198 m2
用途:住宅
仕上げ材料
外壁:道産杉染色仕上げ
屋根:ガルバリウム鋼板(シルバー)
床:オーク複合フローリング
壁: AEP(白)ツヤ消し
天井: AEP(白)ツヤ消し
小上がり:サイザル麻カーペット サイザル敷き(ロール)